歯周病治療(Periodontal treatment)
歯を削る治療だけでは、お口の健康を実現することはできません。
歯ぐきの治療をしっかりと行うことで、将来にわたって歯を守ることが出来ます。
歯周病疾患啓発Webサイト「歯周病治療ナビ」
「歯周病を知ろう」動画
「歯周病を治そう」動画
日本歯周病学会提供動画
歯周病とは?
進行すると歯肉の間に深い隙間(歯周ポケット)ができ、そのままにしておくと歯を支えている歯槽骨などの歯周組織が破壊されて、結果的に歯を失う原因になります。
<歯周病は歯の喪失原因第一位>
全国の調査によると抜歯の原因で最も多かったのが歯周病でした。
品川区歯科医師会と品川女子学院との共同制作の動画です。
一般の方々に分かりやすくまとまっています。
ご興味があればご覧下さい。
歯ぐきの溝のなかもキレイですか?
みなさんは、毎日歯みがきをしていることと思います。歯みがきは歯周病の予防にとってたいへん重要です。
ただし、歯みがきだけで大丈夫と過信してはいけません。
というのも、1日数回きちんと歯みがきをしている方でも、歯ぐきの溝や、歯と歯の間には、必ずいくらかみがき残しが出るからです。
歯の汚れが歯ぐきの溝や歯のすき間に毎日少しずつ残り続けると、いつの間にかそこには歯周病菌が棲みつき、弱い炎症が持続的に起きます。
やがて溝は深くなりそこに歯の汚れが入り込みます。そして歯石となっていきます。
その結果歯の溝はさらに深くなり、空気が嫌いな歯周病菌にとって棲み心地のよい環境ができあがります。
歯周病菌は大繁殖。ついには歯の周りの骨も溶けるという悪循環が始まるのです。
こうなると炎症は慢性化し、歯科医院で治療をしないと炎症は止まりません。進行した歯周病は、決して自然治癒しません。
歯周病患者さんは常時手の平サイズの潰瘍が存在していると認識して下さい。
歯周病菌について
歯周病になると歯に付着していた歯肉がはがれて、溝が4mm以上と深くなります、これを歯周ポケットと呼びます。
このポケットにいる細菌と歯周病の関係を詳細に調べた結果、歯周病になりやすい細菌が5種類ほどいることが分かってきました。
歯周病細菌(歯周病菌)と呼びますが、口臭・大人の口の臭いはこれらの細菌が出す物質によります。
この歯周病菌が口腔内にいる人は、いない人に比べても約5倍歯周病のリスクが高まると言われております。
プラークコントロール
「細菌因子」を改善するためには、口の中のプラーク細菌を
できるだけ低いレベルまで除去するプラークコントロールが必要です。
それには、機械的な方法と化学的な方法があります。
機械的な方法は、歯ブラシや歯間ブラシ・デンタルフロスを用いてしっかりプラークを取り除くことです。
化学的な方法とは、抗菌薬や抗炎症薬を配合した歯磨剤(しまざい)や洗口剤(せんこうざい)を使うことです。
歯科医師や歯科衛生士などの専門家による清掃には、特殊な道具を用いるプロフェッショナル・メカニカル・トゥースクリーニングや歯の周りに付着した歯石を取り除くスケーリング、歯石を取り除いた後、歯根面を滑らかにするルートプレーニングなどがあります。
歯周病検査は衛生的な使い捨て器具で。
歯周病治療の際には、歯周病検査を行います。
その際、衛生的な使い捨てのプローブで検査させて頂きます。
歯周病の治療
歯周基本治療は歯周病の原因であるプラーク・歯石を除去し、炎症症状を改善するためにおこなわれる治療です。
歯周基本治療だけでは症状が十分に改善せず、深い歯周ポケットが残っていたり、複雑な歯槽骨の欠損が認められる場合は、歯周外科治療がおこなわれます。
フラップ手術(歯肉剥離掻爬手術)*保険適応
歯肉に局所麻酔を行った後、歯肉を切開・剥離してプラーク、歯石などを取り除きます。
フラップ手術時に歯周組織再生療法を併用することで、失われた歯周組織を再生させる工夫をすることもあります。
歯周組織再生剤「リグロス」による再生治療(保険適応)
フラップ手術で、プラーク、歯石などを取り除いた後に歯槽骨の欠損部にリグロスを塗布し、歯を支えている歯周組織の再生を促します。
リグロスと同じ成分はすでにやけどや床ずれなどの治療に使用されています。
リグロスは成長因子の作用のより歯周病で破壊された歯周組織の周囲にある細胞を増やし、さらに血管を作って細胞に栄養を送り込みます。
これらの作用により歯槽骨などの歯周組織が再生されます。
歯周病の予防には
知覚過敏と歯周病との関連性
一般に、歯周病になると歯肉や歯槽(しそう)骨などの歯の周りの組織が破壊された結果、歯ぐき全体が下がってきます。
この状態を歯肉退縮と呼び、歯肉退縮が起こると、隠れていた歯根部が表面に顔を出し、相対的に歯が長くなったような外観になります。
歯肉退縮により歯根が露出すると、冷たい刺激や歯ブラシの擦過刺激によって知覚過敏を起こしやすくなるのです。
海外の論文では、歯周病の患者さんの60~98%に知覚過敏が認められるという報告もあります。
歯周病と全身疾患との関連性
歯周病の直接原因は歯と歯肉の境目や歯と歯の間にいる歯周病菌ですが、歯周病になりやすいかどうかは遺伝的な要因と生活習慣が関係します。
例えば喫煙やストレス、偏食などが歯周病を進ませます。
歯周病と全身の健康には関連があります。歯周病に関連する病気としては、早産、リウマチ、骨粗しょう症、糖尿病、肥満、心筋梗塞があります。
歯周病と糖尿病との関わり
現在「歯周病は糖尿病の6番目の合併症」と言われています。
日本では成人の10人に1人が糖尿病です。
一方、歯周病は軽度のものまで含めると国民の10人に7人がかかっていると言われています。
進行した歯周病をもつ糖尿病患者さんの血糖コントロールはうまくいかない報告されています。
また、血糖コントロールが不良な糖尿病患者さんは、非糖尿病患者と比べて歯周病の罹患(りかん)率が約3倍高くなります。
一方で、血糖コントロールが良好な歯周病患者さんには、歯周病のリスクの上昇はないと考えられています。
このように、歯周病と糖尿病は相互に影響しています。
必ずというわけではありませんが、一方の病気にかかると、もう一方にもかかりやすくなると言えるでしょう。
歯周病は単なるお口の病気ではなく、肥満や糖尿病、ひいては動脈硬化、心筋梗塞のようなさまざまな生活習慣病の隠れた黒幕といえるでしょう。
お口の健康は、生活の質(QOL)を高めることにつながります。
お口の健康に目を向けて、充実した生活を送っていただくことを切に望みます。
糖尿病と歯周病との連携治療
専門が歯周病ということもあり、多くの糖尿病患者様のお口を管理させて頂いております。内科や眼科の先生方とも連携を取りながら、治療を進めてまいります。
糖尿病の患者さんと歯科治療
糖尿病の3大合併症は、網膜症・腎症・神経障害ですが、最近では歯周病も糖尿病の合併症の1つとされています。
糖尿病は歯周病を悪化させ、逆に歯周病のために糖尿病が悪化すると言われております。
また、歯周病の治療をすることで糖尿病のコントロール状態が改善する場合があるので、お口の中を清潔にしましょう。
歯周病と糖尿病・認知症との関連性が科学的に証明されています
口腔ケアの重要性 「歯周病と糖尿病・腎臓病との関連性から」
最新の研究では、歯周病の存在が糖尿病および腎臓病の病状に悪影響を及ぼしている可能性が高いことが指摘されています。
人工透析を受けている糖尿病腎症の方は、口腔ケアを積極的に行って、歯周病などの口腔疾患の予防や治療に努めることが大切です。
さらに、そのことが糖尿病や腎臓病の改善にもつながるということを認識していただきたいと思います。
メタボ予防で歯周病予防
日本で行われた調査では、メタボリックシンドロームの該当項目が多いほど歯周ポケットが深く、特に女性では、歯周病が悪化する確率が健康な人に比べて6倍以上も高くなっています。
薬物性歯肉増殖症とは?
ある種の薬を長期間服用していると、歯肉が盛り上がって肥大化することがあります。
このように、薬が原因となって引き起こされる歯肉肥大を専門的に薬物性歯肉増殖症(以下、歯肉増殖症)と呼んでいます。
では、どのような薬で歯肉増殖症が起こるのでしょうか?
現在までに確認されているのは3種類です。
1つ目がフェニトインという抗けいれん薬(てんかんの患者さんに処方)
2つ目がニフェジピンという降圧薬(高血圧症や狭心症の患者さんに処方)
3つ目がシクロスポリンという免疫抑制薬(臓器移植や自己免疫疾患の患者さんに処方)です。
歯肉増殖症は、これらの薬を服用している全ての患者さんに現れるわけではありません。
歯肉増殖症の発症率はフェニトインで約50%、ニフェジピンで約20%、シクロスポリンで約30%と報告されています。
歯科外来で多く遭遇するのは、ニフェジピンによる歯肉増殖症です。
ニフェジピンは発症率が約20%と低いのですが、この薬を服用している患者さんの絶対数が圧倒的に多いため、ニフェジピン由来の歯肉増殖症の患者さんが最も多いように感じます。
一方、発症の要因としては、薬の作用の他に口腔衛生状態や遺伝的な因子が関与していると考えられています。
歯肉増殖症の発症予防には、歯垢(しこう)の除去、すなわちプラークコントロールがとても大切です。
一般に、歯肉増殖症は薬を服用して2~3カ月後から兆候が現れ、歯と歯の間の歯肉が著しく肥大化します。
重度の症例では、盛り上がった歯肉が周囲の歯を覆ってしまい、歯が隠れたり、移動することもあります。
何よりも外観が悪くなります。
また、歯肉増殖症はもともと歯肉に炎症があると発症しやすく、放置すると炎症がさらに広がって、歯周病が進行する可能性も十分に考えられます。
薬物性歯肉増殖症の治療法
歯肉増殖症を発見したときは、医師(内科医など)に薬の変更が可能かどうか問い合わせをすることもございます。
例えば、降圧薬には多くの種類がありますので、ニフェジピン以外の降圧薬への変更となる場合もあります。
しかし、薬が変更になっても、重度の歯肉増殖症では、肥大した歯肉が元に戻るわけではありませんので、歯科での治療は必要です。
軽度の歯肉増殖症では、その部分を清潔に保つことで歯肉肥大が改善します。
歯科医院での専門的な口腔清掃指導を受け、口腔ケアを励行することが重要です。
状況によっては、健康な歯肉を取り戻すために切除する手術が行わうこともございます。
術後の注意点としては、以前と同じ薬を継続服用している人は、再発の可能性が考えられます。
再発を防ぐためには口腔衛生状態良好に保ち、プラークコントロールを徹底することが大切です。
日本歯周病学会 参加
令和4年9月2・3日
第65回
秋季日本歯周病学会学術大会
参加
主催:日本歯周病学会
歯周病関連研修実績
令和4年7月27日
演題:歯周病・インプラント治療に細菌検査を導入する
講師:辰巳順一先生
朝日大学歯学部 教授 口腔感染医療学講座 歯周病学