BP製剤(ビスフォスフォネート製剤)を服用されている患者さんへ
ビスフォスフォネート製剤(BP製剤)は、骨粗しょう症や骨に転移するがんなどに対して用いられる薬剤です。
顎骨壊死を発症すると、文字通り、顎(あご)の骨が壊死を起こし、さらに骨髄炎を併発します。
その発症頻度は1%以下と報告されていますので、多くの人がかかる病気ではありませんが、発症すると重篤な症状を示す病気です。
よって、BP製剤の投与を受けている人は知っておく必要があります。
特に注目すべき点として、顎骨壊死は、外科的な歯科治療、例えば抜歯、歯科インプラント、歯周病の手術などの後に最も起こりやすいことが分かっています。
BP製剤の投与を受けている人に抜歯処置が行われた場合には、歯が抜けた後の骨の治癒が円滑に行われずに骨が露出したままとなることがあります。
このことが顎骨壊死発症の一因になると考えられています。
また、口腔内には多くの細菌が生息しており、抜歯後に骨への感染が起こると骨髄炎が発症する可能性が高まります。
さらに、BP製剤には血管の新生を抑制する作用や血流を低下させる作用もあることから、抜歯後に骨組織への栄養補給が不足して治癒が遅れることも顎骨壊死発症の誘因になると考えられます。
以上のことから、BP製剤の投与を受けている人は、外科的歯科治療を避け、口腔衛生状態を良好に保つ必要があるわけです。
実際、口腔衛生状態が不良な場合には、抜歯などの外科処置を受けた後に顎骨壊死の発症率が著しく高くなることが分かっています。
したがって、BP製剤を注射投与あるいは服用してる人は、日常の口腔ケアが顎骨壊死発症の予防対策につながりますので、日々の口腔清掃は非常に大切です。
また、糖尿病、腎透析、喫煙なども顎骨壊死の危険因子(リスクファクター)であるといわれており、このようなリスクがある場合には、人一倍の口腔ケアの励行が求められます。
中年期以降の女性は注意
骨粗しょう症は骨がもろくなる病気で、中年期以降の女性に多く見られます。
骨粗しょう症の薬物療法に使用される代表的な薬の一つにビスフォスフォネ―ト製剤(BP製剤)という薬があります。
BP製剤は骨吸収を抑えることで骨粗しょう症の患者さんの骨折を防ぐ作用があります。
しかしBP製剤を内服した後に抜歯をしたりすると、抜いた歯の周りがあごの骨が壊死する薬剤関連性顎骨壊死(МRONJ)を起こすことが近年明らかになっています。
BP製剤を使用しているすべての患者さんにМRОNJが生じるわけではなく、過度に恐れる必要はありません。
しかし骨粗しょう症の安全な治療のために、BP製剤の使用開始前に歯科でチェックを受け、必要な歯科治療をすませることが推奨されています。
研修実績
骨粗鬆症と歯科治療の最新情報セミナー 受講
令和5年4月20日、アステラス製薬提供のウェビナーで骨粗鬆症と歯科治療の最新情報を勉強させて頂きました。
1,顎骨壊死出現頻度
①高用量で約1.6%②低用量で約0.13%
2,3~4ヶ月に1回の口腔ケアが重要
3,台湾のデータでは骨粗鬆症と歯周病は糖尿病と同じ双方向の関連性がアリ
4,歯科ではパノラマ読影によるスクリーニングが必要
5,医科歯科連携は都道府県により大きな違いがある。連携キーパーソンの存在が大きい?
今は世界各国からデータが出され、翻訳ソフトの精度向上で言葉の壁が無くなりつつありますから、避けては通れなくなりつつありますね。
当院には問診やおくすり手帳から推測すればBP製剤を服用されていらっしゃる方々はそこそこ多い感じです。
また歯科受診はしているが歯科以外は受診していないという患者さんもそれなりにいらっしゃいます。
今後は医科歯科連携の重要性が益々高まると意識しました。